2006年09月26日

なぜ、欧州当局者はユーロ高円安是正を求めるのか

昨日に引き続き、再びクレディ・スイス証券のレポート「為替・外債ストラテジー・ウィークリー(9月11日)」からの話題です。ユーロに関してはやや円安に振れていたのでこの発言に関してはあまり気にしていませんでしたが、言われてみると確かにそれほど日欧貿易に影響があるような水準では無いのかもしれません。以下はやや長いですが、ユーロ/円の現在の水準がユーロ圏のマクロ経済に大きな影響を与える事は無い、した後からの引用となります。



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トピック:なぜ、欧州当局者はユーロ高円安是正を求めるのか

経済的なメリットがそれほど大きくはないとすれば、一連の欧州当局者の発言は、極めて政治的な側面が大きい。では、どのような政治的思惑があるのだろうか。2 つの可能性を考えてみる。

第1 に、国際協調でユーロ/円高(あるいはドル/円を巻き込みながら)を是正すると示唆しながら、日本に対して欧州からの輸入を増やすよう要請する、第2 に、先のG7 会議でアジア諸国に対して、為替レートの柔軟性を求める声明文を出したにもかかわらず、ほとんど進展していないことから、円高に誘導することで、アジア通貨の上昇を促す、というものである。
まず、第1 のケースは、かつて米国が対日通商交渉を有利に進めようととった戦略である。具体的には日本の個別市場を開放させるため、円高に誘導するというものであった。しかし、ヒストリカルに見ると、こうした戦略は有効に機能してこなかったのが現実である。大野・マッキノン(1998)1は、「円高ドル安によって貿易不均衡は縮小する」という考えを背景に、米国政府は71 年のニクソン・ショックを皮切りとして、日本の黒字が縮小しないことを理由にさらなる円高を要請してきたという。しかし、通商摩擦を背景にした趨勢的な円高は、政治的対立の悪化に貢献しただけでなく、ミクロ的には2 国間貿易を巡る効率性低下、マクロ経済的には、デフレという深刻なショックを日本にもたらしたと指摘する。

無論、ユーロの対日貿易は、通商摩擦が激化した当時の日米の貿易関係と比較するに値しない。ユーロ圏にとってマクロ的には、対米および対英との貿易関係のほうがはるかに重要であり、一部の輸出業者を除いて、ユーロ高/円安の是正で恩恵を受けるところはないだろう。また、アジアおよび米国のユーロ圏と日本からの輸入動向を見ると、いずれもユーロ圏あるいはドイツからの輸入の伸び率のほうが日本を上回っている。輸入シェアも日本のシェアは趨勢的に低下傾向にある。日本企業が海外へ生産拠点をシフトさせていることが一因であろうが、ここからも現在のユーロ/円の水準が、ユーロ圏の輸出企業に打撃を与えるということはうかがわれない。

ということであれば、2 つ目の可能性が高い。欧州勢も高成長が続くアジア向け輸出の増加には期待すべきところがあろう。今後、ユーロがアジア貿易における決済通貨として増え始めれば、アジア通貨高が対アジア向け輸出を後押しする可能性がある。為替市場も、短期的にユーロ安やドル安はユーロ圏や米国の輸出製品の競争力を高めるだろうから、国内の保護主義の台頭を抑制する効果があると見る傾向がある。また、米国の対アジア不均衡が拡大し続ける中、ドルの急落が、世界的な金融市場の混乱を招く前に、軟着陸を模索しようとする思惑もあるのかもしれない。

ボカ・ラトンG7 会議以降、経常黒字国であるアジア諸国に対して為替相場の柔軟性を求めてきたものの、ほとんど効果はなかった。中国人民元の上昇が限定的なものにとどまっており、アジア諸国も自国通貨の急激な上昇に対して抵抗している。資本移動が自由でマクロ経済も比較的安定した工業国間では、通貨高誘導によって対外収支を改善できるという、弾力性アプローチに基づく為替調整論は有効でないというのが通説ではあろうが、程度こそあれ、何らかの規制(資本規制、為替制度)が維持されている新興市場であるアジア諸国においては有効であると、先進国政策当局者が認識している可能性は否定できない。

対ユーロや対ドルで円高に振れれば、アジア通貨も上昇するという発想は、人民元が切り上がれば、円も上昇するという発想と同様、決定的な理由はないと思われる。しかし、かつてのドル/円相場が経験したように、政策当局者のトークや貿易不均衡の拡大自体が、将来の経済政策に関する人々の予想に影響を与え、アジア通貨に対して上昇圧力をかける可能性はある。当初の段階では、各国中銀は為替介入によって、自国通貨高を抑制しようとするだろうが、外貨準備の増加に伴い、国内の流動性は増加することになろう。短期市場が発達していない国では、十分に不胎化することができず、インフレ圧力の高まりに直面することになり、いずれ為替レートの切り上げを容認せざるを得なくなろう。

こうした議論はあくまでも極論であり、現段階で、G7 政策当局者がそこまで念頭にいれているかどうかはわからない。しかしながら、米国の対外不均衡の規模は巨大であり、投資家のドル資産に対する不安が高まれば、自己実現的にドル急落をもたらし、世界的に金融市場を混乱に陥れるリスクがある。政策当局としては、これは避けなければならない問題である。もちろん、米国の対外不均衡の問題は、米国側の貯蓄率の上昇など構造的な是正も必要であるが、当面、アジアの為替相場の柔軟性は、今後もG7 の議題となろうし、為替市場のテーマとなり続けるだろう。そのたびに、一時的にもアジアの経常黒字国である日本の円も上昇圧力にさらされることになりそうだ。


第1の理由についてはその通りだと思うので、第2の理由について検討してみたいと思います。

要するに、アジアで自国に有利な通貨で固定しようとする勢力に対して(多分ほぼ中国を標的としているのでしょうが)、その国との関係の深い(貿易額が多い)日本の通貨を上げる事によって、相対的にその国の通貨を上げようとしているということなのでしょう。日本からしたら迷惑な話です。

さて、文中で保護主義に話題が及んでいますが、意外な話ですが、あれほど問題問題といわれながら、実は米国は中国に対してそれほど保護主義的な態度はとっていません。そういうのはどちらかというとEUの方が厳しいです(「中国製の靴、日本でも急増:輸入靴の70%は中国製」中国情報局、「中国から逃げ出す中国資本」)。つい先日もポールソンが中国に人民元改革の話をしに行く前に「保護主義政策は採らない」と主張していましたが、新保守主義者が多い共和党ではそういう政策は採らないというスタンスなのでしょう。ここで関税を上げてしまったらまた米国から非難される、というのも欧州の首脳陣にはあったのかもしれません。

それにしても、アジア通貨はいろいろなところで歪を起こしているようです。クレディ・スイスは「外貨準備の増加に伴い、国内の流動性は増加することになろう。短期市場が発達していない国では、十分に不胎化することができず、インフレ圧力の高まりに直面することになり、いずれ為替レートの切り上げを容認せざるを得なくなろう」と述べていますが、そんな時期は(高インフレ)とっくにやってきているはずなのに、いつまでアジア諸国(特に中国)はこのような制度を続けるつもりなのでしょうか?

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posted by 正弘 at 01:38| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済・金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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