2005年09月29日

人民元改革T(7月21日の切り上げの評価)

 中国の人民元改革が問題になって久しいです。高まる米国との貿易黒字による緊張は、グローバリゼーションが進む現代にとって米中間だけではなく多くの国に影響を及ぼすでしょう。それはまるで日本におけるプラザ合意が思い起こされます。人民元を対ドル2%切り上げ、通貨バスケット制への以降後も円・ユーロとの変動幅を1.5%から3%に引き上げるなど人民元改革は徐々にですが、確実に進んでいます。しかし、まだまだ米国の満足のいくものではありません。ではここで改めて人民元改革とは何なのかについて、何度かに渡り考えていきたいと思います。

<人民元改革T>
 各国に大幅な対中貿易赤字をもたらしていた中国の為替制度の変更は、待望久しいものでした。人民元の対ドル2%切り上げ、通貨バスケット制への移行は、以下の3つの理由から賞賛に値するものだと考えられます。

 まず第一に、ワシントンの保護主義論とそれに伴う国際情勢安定への重大な脅威は、今回の決断を受けて後退するであろうということです。確かに2%の人民元切り上げは、米上院のシューマー、グラハム両議院が提出していた法案に含まれる27.5%には遠く及ばないものでした。米国議会で超党派の支持を獲得していた同法案は、年末近くに上院を経過する可能性が十分にあったと見られます。中国バッシングをする側が追及する展開には程遠いものの、風向きを多少変えるには効果があったと考えられます。

 第二に、今回の措置が中国の輸出競争力に与える悪影響は軽微であるという事です。固定資産投資と輸出は中国のGDPの80%を占め、依然として年率約30%のペースで増加しています。これらの部門が著しく減速した場合、過熱した中国経済はすぐに後退への道を歩むでしょう。世界経済の減速や切り上げ予想に基づく海外出荷の前倒しが2005年上期にみられた事が主因となって、中国の輸出はすでに減速すると見られていましたが、小幅の通貨切り上げは輸出減速を更に確実にすると見られます。総じて、中国の為替政策変更は、今後6〜12ヶ月間のある時点で中国経済が減速するとの見方を後押しする要因です。

 第三に、中国の新しい為替政策は、国際金融システムを取り巻く状況を著しく安定させる要因となります。中国は、従来のドルペッグ制において必要とされた米国債の大量購入を相殺するための十分な国内債発行が実現できていませんでした。これは過剰な通貨発行と信用創造の増加を招き、インフレや資産バブルのリスクを高める結果となっていました。

 また、これはその他の国々に対してもプラスに作用しますが、痛烈な結果を生じる可能性もあります。中国は通貨バスケットに移行することで、大規模な外貨準備高ポートフェリオの分散化を図る必要があります。しかも、中国と同様にドルを著しくオーバーウェイとしているその他アジア諸国の中央銀行も、中国の後に続くでしょう。例えば、マレーシアは中国とほぼ同時に通貨リンギのペッグ制廃止と管理バスケット変動相場制への移行を発表しました。したがって、より柔軟な人民元メカニズムはアジア諸国のドル離れの可能性を高め、これまで米国金利を支えてきた人為的なドル建て資産需要の後退を促すと考えられます。その場合、米国の資産市場、特に不動産市場にサポートを提供している金利に上昇圧力がかかることは疑いありません。そうした変化を受けて、資産に依拠する米国の消費者が試練に直面することは確実でしょう。


<参考文献>
Stephen Roach"An Awesome Move by China"(参照2005-9-29)






posted by 正弘 at 00:57| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済・金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

書評:通貨燃ゆ
Excerpt: 谷口 智彦 通貨燃ゆ―円・元・ドル・ユーロの同時代史 <面白さ>☆☆☆☆ <読みやすさ>☆☆☆ <R指定>R??20(とりあえず、読む前に政治経済の基礎固めを) <書評> 著者..
Weblog: 読み人日記
Tracked: 2005-10-10 13:46

人民元切り上げは「想定内」
Excerpt: 【英英辞書】 revalue To revise the value of (a nation\'s currency) 見直す 価値を ←国の通貨 significant(a..
Weblog: TIME ガイダンス-choibiki's BLOG-ホンモノで学ぶ、英語を学ぶきっかけ探し
Tracked: 2005-10-12 09:00

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。