2005年10月03日

原油高が政府を倒す日

 近頃、世界経済は原油高に対して予想以上に堅調に推移しているなどと言われながらも、原油高の影響を吸収しきれなくなってきた事例が多く見られ始めました。米国ではジェット燃料費の高騰によりデルタやノースウェストなど大手航空会社が破綻、原油高に対して強い耐性を持つといわれる日本ですらも、漁業や運搬会社など一部の会社でそのショックを吸収しきれなくなってきています。また、原油高騰に伴う輸送費の増大は、グローバリゼーションが進む中での世界貿易の縮小という事態を引き起こす可能性も否定できません。しかし、そのような影響が軽微だと思えるような大事件がおきました。それがインドネシアのリゾート地バリ島で起きた連続自爆テロです。

 今回の自爆テロで少なくとも邦人男性1人を含む25人が亡くなりました。負傷者は120人以上に上ります。インドネシア治安当局は国際テロ組織、ジェマ・イスラミア(JI)の犯行の可能性が高いとみて捜査に乗り出したようです。JI はフィリピン南部からほぼ自由に密航しており、武器の密輸も野放しの状態で、相当量の爆発物を持つとされています。

 そもそも、今回の自爆テロの原因は、助成金の負担に耐えられなくなったインドネシア政府の石油製品の価格値上げ(平均2.26倍)です。インドネシア政府が2004年に支出した補助金の合計額は約85兆ルピア(95億ドル)で、うち69兆ルピア(約77億ドル)が燃料補助でした。同年燃料補助金による経済負担が対GDP比3%に達し、財政赤字はGDP比約1.2%に膨らみました。燃料補助費がなければインドネシアは昨年財政黒字を計上していたはずです。しかも、今年になって財政事情はさらに大幅に悪化しました。燃料補助金は約140兆ルピア(約146億ドル)、対GDP比5.3%に達したと推定されます。この結果、財政赤字はおそらく対GDP比約2%まで悪化しているでしょう。

 そんな中での石油製品価格引き上げだったのですが、国民の理解を得ることは出来なかったようです。バス会社は抗議のストを決行し全国各地で混乱が相次ぎ、労組や学生はジャカルタで3万人規模の大規模デモを準備しているとの情報もあります。政府は貧困層の1550万世帯への保証金として30万ルピア(約3400円)相当のクーポンの配給を開始しましたが、小売店などは食料品の価格を早くも一割以上値上げしており、「一時しのぎに過ぎない」との批判も強いです。更に今回の外国人旅行客を巻き込んだテロで、国際的な信用にまで傷がつきました。

 ユドヨノ大統領は昨年、初の直接選挙で選ばれた人気の高さを背景に改革を線を走ってきましたが、早くも信用が失墜、試練に見舞われました。しかし、これはインドネシアだけの問題ではなく、燃料に補助金をかけている多くのアジア諸国においても起こりうる問題です。今後補助金を設定している多くの国が補助金の削減や撤廃などの改革を行うでしょう。その際その国がどうなるのかは、今後警戒を増していかなければなりません。

<追記>
 今日の新聞の朝刊を見ていると、テロの原因が原油高であるということはほとんど書かれておらず、インドネシアの治安の問題ばかりが強調されています。確かにそれもあるのかもしれません。しかし私は、それは根本の原因を取り違えた論点のすり替えであり、原油高が人を殺したという事実を改めて認識しなければならないと思います。読んでいるのが日経新聞のせいかも知れませんが(経済新聞として投資家が人を殺したというようなことは書きたくないでしょう)。繰り返しになりますが、このような事件は燃料に助成金を加えていて、なおかつ原油高では生活できない人の割合が多い途上国ではいくらでも起こりうることです。これから同じようなことがアジアの国々で起こったとき、新聞はまたテロ組織のせいにするのでしょうか?






posted by 正弘 at 00:48| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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