2005年10月01日

人民元改革V(ホットマネーのリスク)

 人民元改革の最後は、人民元切り上げを見込んだ中国へのホットマネーの流入に伴う改革へのリスクについてです。ホットマネーとは「国際金融市場を動き回る投機的な短期資金」のことで、これがアジア、特に中国に流れ込んでいると考えられます。理由は簡単で、人民元のように将来的に切り上がるのがほぼ確実と予測されるのならば投資する、という当たり前の投資家心理です。株を買うよりもよっぽど確率が高いでしょう。そして、ホットマネーというものは概して「一斉に押し寄せ、一斉に去っていくもの」です。人民元が大幅に切り上げられる、もしくは変動幅が増加し適正価格まで上がるとするならば、投資家たちは一気に人民元を売り、ドルを買うでしょう。そうなると人民元は一気に下落、中国企業は外資に買収され、外貨準備高が大幅に下がることによって中国政府はIMFのお世話になることになります。主権国家としてそのようなことは実に避けたいものでしょう。

 現在アジアに流入しているホットマネーは、1998年に流出したホットマネーの3倍以上とも言われます。これは、タイ・バーツが下落したあの忌まわしいアジアの金融危機よりもはるかに規模が大きい金融危機が迫っていることを意味します。1998年のときは日本円も1ドル140円台まで下がったことは記憶に新しいこと、日本も他人事ではありません。新聞を見る限りでは金融庁も準備はしているようですが、どこまでショックに耐えられるでしょうか。国際的な歪みを是正するためには必要なことなのかもしれませんが、せっかく景気が回復してきているこの局面ではできれば避けてもらいところです。米国が用意したこの最大でおそらく最後の「中国バブル」の行く先は、日本としても今後注意が必要でしょう。




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2005年09月30日

人民元改革U(通貨バスケット制への移行について)

 中国の最終的な目標は、金融政策の独立性を高めることですが、それには対ドル・ペッグを止める必要があります。中国は中期的(5〜10年間)には、管理フロート制のもと、必要に応じて市場介入を行う体制を目指しています。そもそも、今回の2.1%切り上げという措置そのものは、政治的、戦略的には意義があるものの、経済的には全く意味がありません。単なる「手付金」のようなものでしょう。むしろ、切り上げよりも通貨バスケットのほうがはるかに重要と考えられます。以下にその理由を三つ挙げてます。

 第一に、通貨バスケットを参考にする枠組みの採用により、ドル/人民元の決定要因は、中国経済のファンダメンタルズではなく、ユーロや円など通貨バスケットを構成すると思われる通貨となります。中国国内ではなく、海外の要因がドル/人民元の動向を決めるのです。

 第二に、通貨バスケットを参照してレートが決まることから、ドル/人民元は、アンカー通過の値動きしだいで、上下いずれの方向にも変動し得るということです。どうしてもドル/人民元は一方向にしか動かないと思いがちですが、それは間違いです。

 第三に、中国の貿易ウェイトに基づき5つの通貨で構成されるバスケットのウェイトを試算すると、米ドル(27%)、円(31%)、香港ドル(24%)、ユーロ(15%)、英ポンド(4%)ほどになると考えられます。ドルの「ハード・ペッグ」通貨(米ドルと香港ドル)がバスケット全体の50%を占め、円をドルの「ソフト・ペッグ」通貨と考えれば、これを含めた「ドル」のウェイトは80%程になります。このことは、通貨バスケットがドルに対して比較的「硬直的」にさせ、ドル・人民元レートが引き続き非常におとなしい動きをすることを意味します。

 最近の円・ユーロとの変動幅増大などの人民元改革を見ている限り、どうやら人民元改革の焦点は人民元の大幅切り上げより、変動幅の増大に移ったようです。しかし、ここで注意しないといけないことは、一度に大幅に変動幅を上げると、1997年のタイ・バーツの変動相場制移行の時のように通貨危機になりかねないということです。中国政府のこれからの動向にはまだまだ注意が必要です。

<参考文献>
Stephen Li Jen"A Baby Step Towards a BBC"(参照2005-9-30)




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2005年09月29日

人民元改革T(7月21日の切り上げの評価)

 中国の人民元改革が問題になって久しいです。高まる米国との貿易黒字による緊張は、グローバリゼーションが進む現代にとって米中間だけではなく多くの国に影響を及ぼすでしょう。それはまるで日本におけるプラザ合意が思い起こされます。人民元を対ドル2%切り上げ、通貨バスケット制への以降後も円・ユーロとの変動幅を1.5%から3%に引き上げるなど人民元改革は徐々にですが、確実に進んでいます。しかし、まだまだ米国の満足のいくものではありません。ではここで改めて人民元改革とは何なのかについて、何度かに渡り考えていきたいと思います。

<人民元改革T>
 各国に大幅な対中貿易赤字をもたらしていた中国の為替制度の変更は、待望久しいものでした。人民元の対ドル2%切り上げ、通貨バスケット制への移行は、以下の3つの理由から賞賛に値するものだと考えられます。

 まず第一に、ワシントンの保護主義論とそれに伴う国際情勢安定への重大な脅威は、今回の決断を受けて後退するであろうということです。確かに2%の人民元切り上げは、米上院のシューマー、グラハム両議院が提出していた法案に含まれる27.5%には遠く及ばないものでした。米国議会で超党派の支持を獲得していた同法案は、年末近くに上院を経過する可能性が十分にあったと見られます。中国バッシングをする側が追及する展開には程遠いものの、風向きを多少変えるには効果があったと考えられます。

 第二に、今回の措置が中国の輸出競争力に与える悪影響は軽微であるという事です。固定資産投資と輸出は中国のGDPの80%を占め、依然として年率約30%のペースで増加しています。これらの部門が著しく減速した場合、過熱した中国経済はすぐに後退への道を歩むでしょう。世界経済の減速や切り上げ予想に基づく海外出荷の前倒しが2005年上期にみられた事が主因となって、中国の輸出はすでに減速すると見られていましたが、小幅の通貨切り上げは輸出減速を更に確実にすると見られます。総じて、中国の為替政策変更は、今後6〜12ヶ月間のある時点で中国経済が減速するとの見方を後押しする要因です。

 第三に、中国の新しい為替政策は、国際金融システムを取り巻く状況を著しく安定させる要因となります。中国は、従来のドルペッグ制において必要とされた米国債の大量購入を相殺するための十分な国内債発行が実現できていませんでした。これは過剰な通貨発行と信用創造の増加を招き、インフレや資産バブルのリスクを高める結果となっていました。

 また、これはその他の国々に対してもプラスに作用しますが、痛烈な結果を生じる可能性もあります。中国は通貨バスケットに移行することで、大規模な外貨準備高ポートフェリオの分散化を図る必要があります。しかも、中国と同様にドルを著しくオーバーウェイとしているその他アジア諸国の中央銀行も、中国の後に続くでしょう。例えば、マレーシアは中国とほぼ同時に通貨リンギのペッグ制廃止と管理バスケット変動相場制への移行を発表しました。したがって、より柔軟な人民元メカニズムはアジア諸国のドル離れの可能性を高め、これまで米国金利を支えてきた人為的なドル建て資産需要の後退を促すと考えられます。その場合、米国の資産市場、特に不動産市場にサポートを提供している金利に上昇圧力がかかることは疑いありません。そうした変化を受けて、資産に依拠する米国の消費者が試練に直面することは確実でしょう。


<参考文献>
Stephen Roach"An Awesome Move by China"(参照2005-9-29)




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2005年09月26日

愛知万博閉幕。その経済効果は?

 「自然の叡智」をテーマに、日本を含めた121カ国と4国際機関が参加した愛知万博(愛・地球博)は、昨日25日、185日間の会期を終え閉幕しました。21世紀最初の国際博覧会となった愛知万博には、目標1500万人を上回る2200万人以上が入場。最終日となる昨日も約24万人が入場し、フィナーレを迎えました。

 愛知万博は経済面での波及効果も予想を上回りました。日経新聞によると、主要なものは次の通り。

入場券販売収入=575億円(入場者数2204万人)
 当初目標=425億円(1500万人)

公式グッズ販売額=800億円
 当初想定額=600億円

東海三県への経済効果=1兆2822億円

インフラ総事業費=3兆円
 東海環状自動車道の約73キロ延長など

百貨店売上高=2300億円
 3-5月の名古屋市内5百貨店。前年同期比6.3%増

東海道新幹線の累計輸送量=7%増
4-8月の前年同期比

有効求人倍率=1.68倍

ホテル稼働率=98%

「リニモ」乗降客数=1950万人
 24日まで。当初目標1560万人

などなど。中部経済連合会は、万博と中部国際空港の2大事業の需要拡大効果を、2000年度から5ヵ年で累計2兆1100億円と試算しています。また高速交通網の影響も大きく、東海環状自動車道などの開通で、トヨタ自動車関連の工場群が集中する豊田市周辺から岐阜、四日市などを結ぶ物流網が大幅に短縮し、中部空港との相乗効果から本社機能を愛知県に移した企業も現われました。

 愛知県にはトヨタの本社もあり元々景気はよかったのですが、愛知万博は更なる(予想以上の)経済発展に寄与したようです。日本全体での経済回復はまだまだという感じですが、中部地方がこれからの経済回復の、いっそうの牽引役になってくれるのでしょうか?




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2005年09月25日

G7会議と人民元改革

 ワシントンで開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は23日夕(日本時間24日朝)、共同声明を採択して閉幕しました。声明は、「世界経済は全体として拡大を続けており、さらに成長する見通し」と分析した反面、「リスクは増大している」と指摘。G7の挙げたリスクは次の三つ。

Tエネルギー価格の高騰
U世界的不均衡の増大
V保守主義圧力の高まり

Tのエネルギー価格の高騰に関しては、石油価格への措置として、
 @余剰生産力を持つ産油国への持続的な供給増の要請
 A炭鉱、生産、生成能力などへの大幅な投資
 B産油国への良好な投資環境、透明な商慣行の確保の要請
 C産油国との対話の強化・拡大
 D石油・製油製品価格を抑制する補助金や人為的な価格統制の回避
 Eテクノロジーやイノベーションの促進
 F代替エネルギー源への投資促進
 G世界のエネルギー見通し改善のための政策

などを主要な対策としました。主に産油量強化を目的としたものが多い気がするのですが、産油量を増やすことは今回の石油価格高騰に対して果たして効果をもたらすのでしょうか?今回の石油価格上昇については投機的なものが大きいという説が強く、今までとは違い「供給側」ではなく、「需要側」のショックだといわれます。「需要」には、中国やインドのような新興国でのこれからの需要増を見越したものや、米国での戦略的石油備蓄(SPR)積み増しからイランとの戦争が近いのではないかという予測から生まれたものなど様々なものが考えられます。そこに各国での金融緩和政策によって生まれた余剰資金が流れて、一種の「石油バブル」のようなものを生み出しているのです。今回の決議からはそういったものに対処する策が全く見られません。

 むしろ注目すべきは、産油国への投資などではなく「D石油・製油製品価格を抑制する補助金や人為的な価格統制の回避」でしょう。今回の決議はこれのためにあったのではないかというような気もします。新興国での補助金は適切な市場作用を歪めるものとして排除しなければならないという意見が根強いです。原油価格高騰に耐えきれず背補助金を停止する国も現われてきていますが、中国などまだまだ補助金を続ける姿勢を崩していない国も多く、今後の対応が注目されます。

次にU世界的不均衡の増大については、

 米国:更なる財政健全化
 欧州:更なる構造改革
 日本:財政健全化を含む更なる構造改革

などが話し合われました。特に米国はハリケーン・カトリーナによって今年度はさらに赤字が増える見込みが強く、要注意でしょう。

 為替問題に関しては、初めて名指しで中国に言及し、「為替制度の更なる柔軟性の追求への決断を歓迎する」と表明しました。注目された米国の圧力なのですが、先日人民元の変動幅をドル以外3%にするなど改革への姿勢をある程度示したため、米国も中国への圧力を低下するしかなかったようです。もっとも、拡大する対中貿易赤字を是正するためには米国は人民元の改革が急務だと考えており、まだまだ人民元をめぐる問題はしばらく続きそうです。




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2005年09月24日

The 400 Richest Americans

 米経済誌フォーブスは22日、米国内の資産家400人をランキングした恒例の長者番付を発表しました。26人を除けば総資産は10億ドルを超えます。ランキング上位25名は以下の通り。

1 Gates, William Henry III  Microsoft
2 Buffett, Warren Edward  Berkshire Hathaway
3 Allen, Paul Gardner    Microsoft, investments
4 Dell, Michael       Dell
5 Ellison, Lawrence Joseph  CA Oracle
6 Walton, Christy      Wal-Mart inheritance
6 Walton, Jim C       Wal-Mart
8 Walton, S Robson     Wal-Mart
9 Walton, Alice L      Wal-Mart
10 Walton, Helen R       Wal-Mart
11 Ballmer, Steven Anthony   Microsoft
12 Anthony, Barbara Cox    Cox Enterprises
12 Chambers, Anne Cox      Cox Enterprises
12 Johnson, Abigail       MA Fidelity
15 Adelson, Sheldon      Casinos, hotels
16 Brin, Sergey        Google
16 Page, Larry E       Google
18 Omidyar, Pierre M      Ebay
19 Kerkorian, Kirk      Investments, casinos
19 Mars, Forrest Edward Jr  Candy
19 Mars, Jacqueline      Candy
19 Mars, John Franklyn     Candy
23 Kluge, John Werner     Metromedia
24 Icahn, Carl        Leveraged buyouts
25 Redstone, Sumner M     Viacom

 ソフトウェア最大手マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が資産総額510億ドルと12年連続で首位に終わりました。2位は投資家のウォーレン・バフェット氏の400億ドルと続きます。上位には相変わらずウォルマート目立ちますね。まあ当然といえば当然なのですが…。

 注目は株価が急上昇中のインターネット検索大手グーグルの創始者、セーゲイ、ブリン氏とラリー・ペイジ氏の16位でしょうか。昨年の43位から急上昇しました。

 一方リストに入る人もいれば外れる人もいます。空機墜落で亡くなったウォルマート相続人ジョン・ウォールトンを含めて昨年のリストの内8人のメンバーが亡くなりました。ウォールトンの資産は妻のクリスティーが引き継ぐそうです。他にも単純に33人のメンバーがその位置を維持できませんでした。

 メンバー交代が33(+8)人というのは多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか。どちらともいえない気がします。まあそれはおいておいても、ビル・ゲイツ氏が12年連続首位と、(多少の上下はあるとはいえ)メンバーが硬直してしまっていることは、米国の経済がかつて程の勢いがないことを表しているのではないでしょうか?

<参照>
"Special Report The 400 Richest Americans" (参照2005-9-24)




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原油価格上昇とこれからの世界経済

 モルガン・スタンレーは、原油価格が予想以上に上昇している点を鑑み、2006年のGDP成長率予測を世界経済については0.4%ポイント、アジア・太平洋地域については0.3%ポイント引き下げたようです。原油価格は今年に入っても引き続き上昇しており、年初以降2004年の水準を平均38%以上、昨年の平均価格比較すると72%上回っています。現時点では世界経済やアジア経済は原油価格の上昇にもかかわらず予想以上に堅調に推移していますが、徐々に問題点が浮き彫りになってきました。それは、高い資産価格と(主にアジア地域での)補助金の存在についてです。

 例えば米国では、原油価格の上昇によるインフレで消費が押し下げられるのではないかという懸念がありましたが、現時点ではさほど問題になってはいません。その理由としては、原油価格の上昇を上回る住宅価値の上昇が考えられます。要するに、住宅価格の上昇による資産効果はハリケーン・カトリーナの被害による経済状況の悪化や、世界的な原油価格の上昇などで危ぶまれている米国の消費を下支えしているのです。もっとも、FRBは追加利上げの姿勢を崩しておらず、この先どうなるかについては不透明です。

 一方中国の場合は、輸出ブームによってもたらされた流動性やホットマネーが不動産建築に当てられている点や、政府による原油への補助金が消費者を保護していることなどがあげられます。不動産ブームは政府の政策により以前に比べてると下火ではありますが、進行中のプロジェクトが多いため建設活動は以前活況を呈しています。

 また、補助金の面では、中国のガソリン小売価格は世界の中でも最低の部類に入ります。政府が価格を規制し、生成業者に低収益を受け入れるよう強制しているからです。また公共交通機関の料金も値上げされておらず、タクシー価格でさえ料金を据え置くために運転手に直接補助金を交付しています。直接的・間接的補助金の総額は対GDP比2%にも上ると予測されています。

 このような米国や中国における特殊なファクターが高い原油価格に対する世界経済に抵抗力を説明しています。そうした特殊ファクターは世界的な流動性ブームに起因すると考えられます。マネーサプライの緩和が資産市場を通じて需要喚起に繋がり、ホットマネーが新興市場諸国に流入しているのです。

 しかし同時に流動性ブームは、原油価格の上昇についても説明することができます。今回の石油価格の上昇を金融投機だと考えるなら、今回は流動性を石油に当てているのだと考えられるからです。

 したがって、高い原油価格に対する世界経済の抵抗力と原油価格を押し上げている投機的なファクターは出所が同じです。つまり、金融市場に供給される豊富な流動性です。これが原油価格に関連した経済予測を非常に困難としており、また流動性バブルが崩壊した後の世界経済の混乱を、考えるだけで恐ろしいものにしているのです。

<参照>
Andy Xie."Asia Pacific:Cutting Growth Forecasts on Oil"(参照2005-9-24)




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2005年09月23日

FOMC0.25%追加利上げ。市場は景気減速懸念か?

 米連邦準備理事会(FRB)は20日米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラル・ファンド(FFレート)金利(日本では無担保コール翌日物金利に相当)の目標水準を0.25%引き上げて3.75%に、また公定歩合を0.25%引き上げ、4.75%とする事を決定しました。いつもは全員一致で決定されるのですが、今回は一人反対した人が出ました。賛成、反対のリストは次の通り。

賛成
Alan Greenspan, Chairman; Timothy F. Geithner, Vice Chairman; Susan S. Bies; Roger W. Ferguson, Jr.; Richard W. Fisher; Donald L. Kohn; Michael H. Moskow; Anthony M. Santomero; and Gary H. Stern.

反対
Mark W. Olson

 昨年6月末から始めた利上げは11回目となる今回で、累計の利上げ幅は2.75%となります。以下は外務省のホームページからまとめたFOMCの判断の基準です。

 8月末に米南部を直撃したハリケーン・カトリーナは、メキシコ湾岸地域の広範囲な被害とそれに伴う経済活動の混乱を生じさせ、また、エネルギー価格の上昇は、短期的には、支出、生産、雇用を阻害するだろう。しかしFOMCはこれらが継続的な脅威にはならないと見ており、むしろ金融緩和的な政策が、生産性の基調が力強く伸びていることと相俟って、経済活動を後押していると信じる。エネルギー価格や他のコスト上昇が、インフレ圧力を高める潜在的可能性はあるが、コアインフレはここ数ヶ月比較的低水準に留まり、長期的なインフレ期待も引き続き抑制されている。 FOMCは、適切な金融政策を用いれば、持続的成長と物価安定の達成に対する上振れ、下振れリスクはおおよそ同程度に保たれると認識している。基調インフレは落ち着いていると見込まれ、金融緩和政策は慎重なペースで解除され得ると考える。それでもなお、FOMCは物価安定の責務を果たすため、必要に応じて経済見通しの変化に対応する。

 今回は追加利上げとなり、原油高騰などによるインフレを懸念した形となりましたが、このようなFOMCの判断に対して市場の反応は冷ややかです。株式市場は、引き締めスタンスに変わりがないとの見方や、実際のところインフレ懸念を想起させる内容であったこと、利上げの打ち止め時期についても示唆されなかったことなどから、売りに押され下落しました。また、10年もの国債利回りは利上げにもかかわらず前日と変わらぬ4.244%で取引を終えるなど市場悪化の懸念は深刻です。

 また、最近の住宅価格高騰がバブルの様子を呈していることも重要な問題です。貯蓄についても底をついているというデータが出ているため、現状でのバブル崩壊は米国に致命的なダメージを与える可能性があります。

 いずれにしても、米国は世界最大の消費国であり、日本や、その他世界の多くの国にとっても重要な市場です。米国経済の崩壊は、世界経済の減速に直結します。この先FRBには出来る限り慎重な決議をしてもらい、世界の安定に貢献してもらいたいものです。またそれは、唯一の超大国としての米国の義務でもあると思います。

<参照>
外務省."米国の金融政策 9月20日FOMCの概要" (参照2005-9-23)

FOMC statement."For immediate release " (参照2005-9-22)




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2005年09月22日

東京23区基準地価15年ぶり上昇。資産デフレ脱却か?

 国土交通省が20日発表した2005年の基準地価(7月1日時点)は東京23区の住宅地で前年比0.5%、商業地で同0.6%それぞれ上昇しました。また、大阪や名古屋など大都市圏でも上昇が目立ちます。大都市の郊外部や遠隔地などでも横ばいや下落数の低下など、全体的にデフレに歯止めがかかっているようです。

 大都市部の中でも特に回復が目立つのが首都圏です。東京都区部は、平成2年以来15年ぶりに全体で上昇となり千代田・港・渋谷など都心部に加え、目黒・世田谷・中野・杉並などJR山手線の外側でも全体で上昇する地域が出てきました。また「つくばエクスプレス」の開発に伴う住宅需要への期待感から、茨城県守谷市では住宅地が2.6%と大きく上昇しました。

 地方圏でも、住宅地、商業地とも下落幅は縮小しており、特に、住宅地は、8年ぶりに下落幅が縮小した。中でも、札幌市、福岡市などの地方ブロックの中心都市では、上昇や横ばいの地点が増加しています。

背景として、国土交通省が挙げているのは次の通り

景気が底堅く推移する中で、
・ 大都市の中心部にあっては、収益型不動産に対する投資の活発化や需要側の値頃感によるる都心回帰指向から、利便性や環境の優れた地域における店舗や事務所、マンション等の需要が増加したこと、
・ 大都市の中心部以外の地域にあっては、市街地整備や鉄道などの交通基盤整備等に伴い利便性の向上や優れた住環境が顕著となった地域等において住宅の需要等が堅調であったこと等が挙げられる。

 最近本当に景気が回復してきている事がわかる指数の発表が相次いでいます。 バブルの頃と比べると住宅価格は33%下落しており、下落幅が小さくなってきたくらいではまだまだなのかもしれませんが、バブルの象徴であった土地の価格下落ががとりあえず止まりつつあることは、今後私たち日本人に自信を取り戻させてくれるのではないかと思います。

<参照>
国土交通省:平成17年都道府県地価調査 (参照2005-9-22) 




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2005年09月21日

日本とドイツ、改革への期待の差株価に明確に。

 20日の東京株式市場で日経平均は大幅反発し、大引けは3連休前の16日に比べ189円89銭高の1万3148円57銭と、2001年6月11日以来約4年3カ月ぶりの高値で取引を終えました。東証1部では全体の8割近くに達する1282銘柄が上昇、また、初年度来高値を更新した銘柄は300を超えます。

 このところの堅調な相場の背景には、国内の景気回復に対する期待の高まりがあると思います。景気の踊り場脱却宣言や、年内のデフレ脱却宣言企業利益の労働所得への転換による消費者心理の改善設備投資の激増、4-6月期の実質GDP改定値が年率換算で前期比3.3%増への改訂などなど、このブログで紹介してきた中でも景気回復を示唆する指標はかなりの数にのぼります。しかし何と言っても、衆院選での自民党の3分の2議席を超える圧勝による構造改革進展の期待が大きいでしょう。

 対して選挙が終わったばかりのドイツ株式市場は、売り一色の様子です。欧州市場でもユーロが対ドルで1%以上下げて1ユーロ=1.21ドル後半で取引されています。保守系野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の議席が思うように伸びず、市場が期待した「改革促進」が思うように進まないことが明らかになったからです。

 個別株で下げがきついのはエネルギー大手のRWEとエーオンで、下げ幅は2%におよびます。CDUは原発推進を掲げていたため、原発廃止政策が見直されるとの見方から電力会社のコスト低減に結びつくとして、大きく買われていました。しかし、与野党とも過半数に達しなかったため、原発廃止を掲げる連合90・緑の党が引き続き政権内に残る可能性が強くなり、売りが進みました。

 政治が経済に与える影響というのは大きいものですが、日本とドイツ、ほんの一週間の差で選挙が行われたこの二つの国で、これほど明暗が分かれたのは大変興味深い事だと思います。CDUは、日本の自民党のようにはいきませんでしたが、政権を取ったらドイツ経済を軌道に乗せる政策をとり、日本と良好な政治的・経済的関係を発展させていってもらいたいですね。

<参照>
東証大引け・反発――内需株買われ4年3カ月ぶり1万3100円台 (日経新聞)

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